当院では保険が適応されている医療用漢方製剤を精神科心療内科担当医が処方しますので、精神科外来をご予約下さい。担当医は北里漢方研究所病院 漢方鍼灸治療センターで漢方医学研修を終了しており、「証=漢方的病態」をもとに病名に対して一律に処方することではなく、個別の病態に対応しております。
漢方薬は天然成分の生薬を組み合わせて処方される多成分系の薬剤で、身体の様々な部分の不調を整え、治癒力を高めていきます。多くの漢方薬はその作用や目的により余分なものを取り除く瀉剤、不足を補う補剤、不調を中和解毒する和解剤などに分類されます。漢方では診断した証をもとにその中から最適な薬を選びます。様々な個別の病態や経時的変化を十分考慮して治療し、治療の反応を観察して処方を変更することもあります。
漢方薬は西洋薬と比較し、副作用は比較的少ないですが、まれに出ることがあり、過敏症やアレルギー、証に合わない場合、一時的に悪化する場合(好転反応)などがおきることがあります。合併症によっては使用できない生薬もありますので、詳細な問診が必要になります。服薬前後の血液検査や診療にて経過をみていきます。漢方薬によって西洋薬の効果が高まり、最小限の投与量で安定することもあります。主に以下の病態に漢方薬を処方していますが、西洋医学的な検査、治療が必要な場合は、西洋医学を優先または併用をお勧めします。
慢性頭痛には色々なタイプがあり、基礎疾患のない一次性頭痛は緊張型頭痛、片頭痛が多く見られます。緊張性頭痛は精神的ストレスや頭頚部の筋緊張により引き起こされます。高血圧傾向の場合は釣藤散や黄連解毒湯が有効です。肩こりを伴う場合は葛根湯や桂枝加葛根湯などを使用します。片頭痛は体動や女性ホルモンの変動、気圧などで増悪しやすく女性に多く見られます。呉茱萸湯や五苓散などが有効です。
めまいには目が回る回転性めまいと、体がふらつく浮遊性めまい、脳虚血によるもの(脳貧血)などがあります。回転性めまいは内耳から脳内の神経経路の障害によりおき、原因としては脳幹、小脳出血、脳腫瘍、メニエール病、良性発作性頭位めまい症などがあげられます。
浮遊性めまいは前頭葉や下肢末梢神経障害、精神不安などによっておき、原因としては脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血などにより起こります。脳虚血の原因としては低血圧や起立性調節障害、迷走神経反射などがあげられます。証によって苓桂朮甘湯、五苓散、大柴胡湯、小柴胡湯、加味逍遙散、当帰芍薬散、半夏白朮天麻湯などを使用します。
風邪やアレルギー物質などで起こり、小青竜湯、大青竜湯、葛根湯、麻黄附子細辛湯、清肺湯などを使用します。
緊張状態で筋肉を酷使すると、筋肉の血流低下で筋肉が硬化し痛覚過敏になります。ストレスや寒冷で悪化しやすく、筋肉のこりをほぐすことが効果的です。葛根湯や八味地黄丸、芍薬甘草湯、大柴胡湯など使用します。
機能性ディスペプシアの場合は西洋薬と併用し、大柴胡湯、四逆散、半夏瀉心湯や六君子湯、半夏厚朴湯、安中散、人参湯などを使用します。
原因や証などにより漢方を使い分けます。便秘は大黄甘草湯、桃核承気湯、麻子仁丸などを使用しています。下痢は五苓散、柴苓湯、半夏瀉心湯、小建中湯など使用します。
また過敏性腸症候群には桂枝加芍薬湯などを使用します。
局所のむくみは静脈やリンパの流れが悪くなることによりおこります。全身型は疲労や不眠、心不全、腎不全、肝不全、低たんぱく血症、貧血、水分の過剰摂取などでおこります。五苓散、八味地黄丸、当帰芍薬散などを使用します。
気・血・水のどの異常でもバランスが崩れると冷えがおこります。冷えの原因や症状、部位などによって漢方を使い分けます。当帰四逆加呉茱萸生姜湯、当帰芍薬散、温経湯、大建中湯、小建中湯、麻黄附子細辛湯などを使用します。
精神科薬との組み合わせまたは単独で使用します。加味逍遙散、抑肝散、柴胡加竜骨牡蛎湯、半夏厚朴湯、加味帰脾湯、酸棗仁湯など使用します。
婦人科疾患やホルモン異常の場合は婦人科受診が必要になります。温経湯、加味逍遙散、当帰芍薬散、桃核承気湯、芍薬甘草湯など使用します。
抗認知症薬と併用または単独で使用します。抑肝散、釣藤散、帰脾湯、黄連解毒湯などを使用します。高齢の方は甘草による偽アルドステロン症などに注意が必要です。